メッセージ / Messages

「Call Me Kuchu」上映にあたり、ご協力下さった「やっぱ愛ダホ ! idaho-net.」代表 遠藤まめたさんより

はじめてウガンダのことを知ったのは署名サイトの呼びかけだった。「同性愛者を死刑にする法律が通りそうだ、なんとかして制止しよう」という悲痛な呼びかけを見て、署名サイトをクリックした。その後、何度もウガンダの報道を耳にした。あるときはゲイの活動家が殺されたニュースを見た。

署名以外にやることはないのかと、心の中でずっと思っていたので、ある冬の夜に大学生から『Call Me Kuchu』という映画があることを聞いたときには、二つ返事で翻訳しようと約束してしまった。遠く離れた日本の地で、私たちに何がどこまでやれるかわからない。国内のことで、というより、自分の身の回りだけでも大変な毎日なのに「新たな宿題」を自分たちに課してしまったような気もした。

作品中で、ストッシュという一人の当事者がこう語る。「何回も自殺しようとしたけど何をやっても失敗した。たぶん生きる理由がまだ一つだけあるから。私たちの話を聞きたい人がいる」

日本にいる私たちが何ができるかはわからないが、ストッシュの言葉を日本に届けたことには意義があったと、同じ時代をサバイバルしている仲間として強く思う。

2014年2月、とうとうウガンダの反同性愛法は成立してしまった。闘いは続く。一人でも多くの方に、彼らの姿を見て、聞いてほしい。そして一緒に考えてもらえたらうれしい。

画像:遠藤まめたさん

「エソラ」監督 田中昭全さんより

この度は、映画「エソラ」を上映いただきありがとうございます。

この映画の主人公と同じく、ぼくもゲイです。香川県の片田舎で、同性パートナーと共に暮らしています。双方の両親にはカムアウト済みで、一緒に旅行に行ったりたまにはごはんを一緒に食べたり、男女の夫婦と変わらない親戚付き合いをしています。

田舎が保守的というのは、果たしてほんとうなのでしょうか?少なくてもぼくの周りに居る友人たちは、ぼくとパートナーの関係性をごく普通のこととして受け入れてくれています。もちろん、ここに辿り着くまでは長い時間がかかりました。未解決の問題もあります。しかし、応援してくれる人たちが居る以上、おどおどしている暇はないのだと自分に言い聞かせています。

そんな地元で、念願の短編映画を作りました。制作にあたって気をつけたのは、『セクシュアルマイノリティの専門用語は使わない(恋愛の普遍性を描く)。』そして、『希望のあるエンディングを用意する。』かつての自分がそうだったように、この映画をみた人が勇気を持ってくれたらいいなと思います。

「青森インターナショナルLGBTフィルムフェスティバル」は地方発の映画祭ということで、ものすごい親近感があります。マイノリティに関わる問題だからこそ、地方でやる意味や意義はとても大きいと思うのです。

セクシュアリティのことを考えれば考えるほど、最終的には『どう生きたいか』というところに辿り着きます。他人からどう思われようが、自分のしあわせは変えられない。だったら、自分の考えるそのしあわせを、誰にでもわかるような言葉で提示すればいい。そこに共感できる何かがあれば、違いを超えてわかりあえるはずです。人生は常に、そこからしか始まらないのではないかとさえ思います。ぼくらの映画が、その一助となりますように。

画像:田中昭全さん

「僕の中のオトコの娘」監督 窪田将治さんより

青森インターナショナルLGBTフィルムフェスティバル開催おめでとうございます。今回は拙作「僕の中のオトコの娘」を招待頂き大変嬉しく思っております。

この映画は女装と言う今、日本でポピュラーになりつつあるマイノリティ文化が舞台です。主人公は女装に芽生えることで自分の居場所を見つけますが非常に困難を強いられます。しかしそんな生きづらい世界でも主人公は必死に生きようと努力します。

日本映画界もまた世界の映画界と比べると非常に文化芸術意識が低く映画監督として生きるのは非常に生きづらい世界です。形、世界は違えど、この映画の主人公は僕自身でもあります。

この作品で自分に正直に生きる難しさや一歩踏み出す勇気を感じてもらえれば嬉しく思います。女装という文化を題材にした映画が皆様にどのように受け止められるか非常に楽しみです。どうぞお楽しみください。

画像:窪田将治さん

「TSUYAKO」監督 宮崎光代さんより

ひとは「死」に「生」を見つけることがあります。

数年前、祖母の11回忌の法要で日本に帰国した際、古い写真の入った箱を見つけました。そこには若くてみずみずしく、満ち足りて穏やかな表情をしている家族の誰もが知らない祖母の姿が、何枚もの写真から伺う事が出来ました。 そしてふと、若い女性の隣に座っている祖母の一枚の写真に目がとまりました。 二人のまなざしとしぐさからは、どこか友情以上の愛情があるように感じました。見合い結婚をして周囲の期待に沿う人生を送った祖母ーー彼女は家族の幸せの為に自分の自由を捨て生きてきました。そのお陰で、今私たちはここにいると日々、感謝の気持ちでいっぱいになります。

信頼して何でも話せる祖母は私にとって大きな存在でした。いつも、”何があっても、夢を追いかけなさい”と言ってくれました。映画「TSUYAKO」のテーマは「決断」です。自由に人生を歩む事が許されない時代に生まれた人々、そして現在、世界中で個々自由の為に戦う人達に敬意を払い、そして勇気を与えるため、この作品を制作しました。

I hope you enjoy the film.

Mitsuyo Miyazaki


画像:宮崎光代さん